「推拿」とは

推拿とは古来、中国で実践され臨床の中で発展してきた手技の名称で、近年においては中医学と西洋医学が融合した古くて新しい療法です。

 

器具や薬などは使いません。

様々な手技を用いて、経絡や経穴(ツボ)に刺激を与え、全身を巡る気血の流れを整えます。

元来その人に備わっている自然治癒力を高め、病気の予防や改善を行います。

 

 ちなみに…「推」は推し動かす

      「拿」は握る・掴む

という意味があり、それぞれ、推法・拿法という手技の名前から付けられています。

 

推拿は、鍼灸・漢方と並ぶ中医学三大療法のひとつであり、現在でも、中国では病院内に「推拿科」が設けられ医療技術として活用されています。

 この療法は、膝痛や五十肩など筋肉、関節などの損傷によい効果があり、状況によりますが、即効性のある病例も多くあります。

 

**中医学とは

 

 中国の伝統的な医学のことで、その根底には自然哲学があります。自然界のあらゆるものはお互いに関係しあい協調しバランスを保っています。人もまた自然の一部。人の体内も自然界と同じバランスで保たれており、これが崩れると病気になったり、不調が表れると考えます。局所だけでなく全身を整えるという考えが推拿のベースにあります。

 病気の治療や予防のみならず、普段の養生(生活習慣や食習慣、気功法)なども含まれます。



中医学では身体を構成する要素のひとつに「気・血・津液」があると考えています。

「気」とは生きていくのに欠かせないもの。生命力・生命エネルギー

「血」とは身体に滋養をあたえるもの。西洋医学でいう血液に似たもの

「津液」とは身体に潤いをあたえるもの。血液以外の体液

これらが過不足なくスムーズに体内を巡っていれば健康であり、バランスが崩れてしまうと体調の変化となって現れると考えられています。

気血は一定ではなく常に変化しています。一時的にバランスが崩れても休養して元に戻るのなら健康です。

 

この気血の巡る道が「経絡」です。

目には見えませんが頭のてっぺんからつま先まで、上下・左右・内外とあります。

縦ー上下に走るものを経脈、横ー左右に走るものを絡脈といい、施術では主に14本の経脈を用います。このうち12本は臓腑(内臓)とつながっており、それぞれ臓腑の名を取り、肝経・胃経・腎経などと、呼ばれます。

 

そして「ツボ(経穴)」

経絡上に多く存在し、身体の不調が現れる場所であると同時にその不調を調整するポイントでもあります。ツボに刺激を与えると滞っていた気血の流れを改善することができ、また、経絡を通して臓腑にも伝わるのでそれらの働きを調整することができるのです。

 

経絡とツボはよく道路や線路に例えられます。

経絡→線路、ツボ→駅、気→電車

どこかで事故が起こると電車は止まります。駅で事故を解消し、電車の運航を元に戻す、つまり、気の滞っている箇所のツボを刺激し、経絡を疎通させることで気を巡らせることができるというわけです。